「海つばめ」ダイジェスト 第480号
2016年8月24日【無料版】
マルクス主義同志会
http://www.mcg-j.org/
――嵐よ! 強く強く吹き荒れろ!――
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今さら無概念と無知を暴露して
「デフレは悪いことばかりか?」
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ブルジョアや学者や安倍一派は、盛んに「デフレ脱却」を叫び、
そのためにアベノミクスをさらに「ふかし」、「加速させる」と、
財政膨張と金融緩和の?経済政策?――と言うより、
単なるカネのバラまきといった、日本の経済も財政も、労働者、
勤労者の生活もめちゃくちゃにしかねない、
あるいは不可避的にそんな所に行き着くような、場当たりの、
お粗末政治――に走っている。
しかし彼らが克服するという「デフレ」とは、
そもそも何であるのかについてさえ、
いくらかでもまともな正しい認識――正しいかどうかを問う前に、
いくらかでも明確な、一貫した観念さえ――がないのである。
そんな連中が、“正しい”政策を見つけ出し、
また実行に移すといったことはないし、あり得ない。
彼らのデフレ概念とは何とか言ってみれば、
物価の一般的な下落ということであるが、
しかし仮にそうだとするなら、それがなぜに“絶対悪”であって、
何が何でも克服されなくてはならないかは、
ブルジョアたちはともかく、労働者には決して理解できない「
永遠の謎」であろう、というのは、労働者、
勤労者にとって物価が一般的に、
そして継続して低下していくなら、それを悪いこととして否定し、
物価上昇に恋いこがれなくてはならない理由は何もないからである
。
ブルジョアや悪しき経済学者や政治家たちは、
デフレと経済不況や停滞や衰退さえも同一視するのだが、
そんな観念もしくは認識は、
経済の表面的な現実からも簡単に否定されるのだから、
彼らの認識のナンセンスや愚昧さは最初から明らかである。
他の経済条件が同一なら、物価が技術革新と共に、
つまり労働の生産性の上昇と共に低下していくことは誰でも経験的
に知っている、単純な真実である。
それは同一商品を生産するための労働時間(商品の「価値」=
価格として現象している)が減少していくからであって、
それはまさに人類の
“経済的”な、したがってまた社会的、“物質的な”(豊かさの)
、そして増大する文化的な進化の、ブルジョア的現れである。
そして商品の「価値」も、価格という形態において現れる限り、
需給などの諸条件によって、日々刻々変動するものであること、
そしてそれがブルジョア社会にとっての一般的な状態であり、
また一つのメリット、うま味にさえなっていることもまた、
万人が認め得る現実である。
頭の空っぽのリフレ派経済学者や、
安倍一派のご都合主義の政治家たちは、「物価安定」
についておしゃべりすることもあるが、その意味は、
物価が一定の水準を保つと言うことではなく、
また社会の進歩に伴って、趨勢的に低下していくことでもなく、
物価上昇の社会について、つまり2%とか、場合によっては数%
の物価上昇が続く社会のことである。10%、20%
の物価上昇ともなると弊害は大きいが、2%
くらいなら経済的に理想的で、最良の物価の在り方であって、
だからこそ、安倍政権や黒田日銀は、
物価が低落する社会はもちろん、
単に上がっていかない経済までもデフレ社会と呼び、2%
の物価上昇を目標に、“異次元の”、そして“バズーカ砲並の”
金融緩和政策などにのめり込み、
そんなものが日本経済の救い主となるかにはやしたててきたのであ
る。
しかしその場合にも、彼らは、物価変動にも、
日々の価格変動を除けば、一般的に2つの種類があって、
それらは明確に区別されなくてはならないということを全く自覚し
ていなかった。だから彼らの物価上昇を目ざす努力は混乱し、
試行錯誤を繰り返し、結局は失敗するしかなかった。
もちろん彼らの失敗の原因が、彼らの知識と理論のナンセンス、
というより欠如のためだと一概にいえないとしても、
こうした無知蒙昧が彼らの経済政策の選択を過たせ、
それを失敗と破綻に導いたと言って少しも間違いではない(
そもそも労働者なら、そんな“政策”に期待したり、
採用したりすることは決してない)。
今、デフレ脱却が進まない中で、そしてデフレが継続する中で、
つまり物価がはかばかしく上昇しない中で、
まだデフレが続いているといった陰鬱な“悲観論”がはびこり、
他方では、安倍政権のように、アベノミクスをさらに「
加速させる」
などと無軌道な財政膨張につっ走る政治家が現れる中で、「
デフレは悪いことばかりか?」
といった疑念を今さらのように述べる――そもそもデフレ=
原罪論をとなえ、
そんなドグマにとらわれているべきではないと言いたいらしい――
マスコミリベラルも現れている(朝日新聞、8月9日の「
波間風問」、編集委員の堀篭俊材=ほりごめとしき)。
彼はグーグルの発明家、レイ・カーツワイルの著書を引いて、「
彼は『デフレは悪いことか?』と問いかけている。『
失われた20年』の元凶とされるデフレも、技術革新が一因」
と言っていることを紹介している。
「技術が加速度的に進歩すると、
デジタル関連の製品やサービスの価格は上がりにくくなる。
失業率の低さや資産価値の上昇などはインフレの原因となるが、
コンピューターや通信といった情報技術のコストパフォーマンスが
飛躍的に高まることで相殺される、という分析だ」
そして堀篭は、俗学者(みずほ総合研究所の多田出健太)の“
解説”も付け加えて紹介している。
「技術革新が原因のデフレは生活の豊かさにもつながる。
賃金削減などのコスト抑制による『悪いデフレ』とは違います」
こうしたえせインテリらは、
インフレが単なる物価上昇を意味しないと同様に、
デフレも単なる物価下落ではないことを、つまり“経済学”
の初歩さえも知らないのである。
日々の価格変動を別にするなら、
商品の価格は商品の価値が小さくなるなら、その価格――
貨幣による価格表現――も小さくなる、つまり価格は下落する。
もちろん、これは商品の価値の変化を反映したものであって、
我々の常識的な判断力によっても容易に理解できるものである(
商品価値の価格表現はいかにして、何によって行われるのか、
行われなくてはならないかといった、“難しい”
理屈など何も知らなくても)。
しかし商品の価格は、
商品の価値が同じであっても変動するのだが、
まさにこうした名目的な価格現象(上下の変動)をインフレ、
デフレという言葉で表現するのであって、
それは商品の価格を表現する――その基準となる――貨幣(
貨幣もまた、一つの商品であり、その「価値」
は金を生産する労働時間によって規定されている)
の価値が変動するからである。
商品の価格変動の原因が、
商品の価値の変動の方にあるのではなく、
貨幣の価値の変動にある場合にのみ、デフレ、
インフレについて語り得るのである。
紙面と時間の都合のために、結論的にいうと、
貨幣価値が大きくなるなら(つまりこれは、
金を生産するに必要な労働時間が大きくなるということである)、
商品の価格は価値が不変であっても下落する(
商品がより少量の貨幣金と交換され、その貨幣量によって、
商品は価格表現を受け取るから)、他方、
優良鉱が発見されるなどして、
あるいは採掘技術の改良等々によって、
金を生産する労働時間が短縮されるなら、
貨幣金の価値は少なくなり、商品の価格は上昇する。
前者はデフレといわれ、後者はインフレの名で呼ばれている。
しかし「価値論」も何もない、そんな科学的な概念を知らない、
ブルジョア経済学派や安倍一派らにとっては、デフレ、
インフレの本当の概念規定は全くどうでもいいこと、
猫に小判である。
多田出は、まるで「いいデフレ」と「悪いデフレ」
があるかに語るのだが、ただインフレ、
デフレの概念を知らないだけであり、物価上昇や物価下落にも「
色々ある」こと、
したがってそれらを区別することが実践的に重要であり、
また必要であるということを知らないだけである。
だから、彼らは技術革新が進むと、「価格は上がりにくくなる」
と、まるでそれが「悪いこと」、
経済や社会にとってマイナスのことであるかに語り、
不況や経済の停滞が深まることと同一視し、その結果として、
バラまきによる物価上昇を願望し、そしてそれによる「景気回復」
や、「経済成長」までも期待するのだが、
根底の観念が愚劣であり、ピント外れだから、
目標とする結果をもたらすことは決してできないのであり、
かえって不況や停滞をダラダラと長引かせ、インフレを招き寄せ、
経済や財政や社会の弱体化や寄生化や衰退や、
解体さえも招き寄せるのである。
堀篭は最後にようやく、
経済的困難や停滞や衰退からの抜け道として「成長」
に進む道について語っている。
「シンギュラリティ(「AIが人間の知能を超える」
といったような、“技術的特異点”)
に向かう世界で成長して行くためには、
規制緩和による新たなビジネスモデルの創出といった正攻法でいく
しかない」
彼らが怪しげではあれ、それでも「正攻法」
について語るようになったのは慶賀に堪えないが、
いささか遅すぎるということ、
そしてその可能性が彼らにあるかということである。
現実には安倍政権も黒田日銀も、その反対のことだけを考え、
そんな場当たりの政策で、目先の“成果”
ばかりを追い求めているのだから、彼らの未来はない。
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